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これは2018年2月にアーツ前橋で開催した「あーつひろば」というイベントで、とある男の子が作った作品の部分アップです。空き箱の蓋の上に様々な色とりどりの紙を貼り付け、その上にトレーシングペーパーを重ねて、とても繊細な色彩で気に入りその旨伝えて撮影させてもらいました。
この男の子は私にとって大切な出会いのひとりです。3年ほど前に「あーつひろば」を始めたばかりの頃に遊びに来てくれて、子ども達と作品を見るツアーではたくさんお話しして、これまた自由に工作ができるスペースでは作品を作ってサポーターさんたちとよくお話をしていました。お母さんにお話をしたところ、保育園(幼稚園だったかも?記憶が曖昧です)ではあまり話さない子だそうで、お母さんも驚いていました。タンクトップ姿の元気な男の子でした。そういうエピソードもあって、アーティストのワークショップや鑑賞ツアー、サポーターさんが見守る工作スペースなど複合的なイベントプログラムである「あーつひろば」は、色々な人たちがちょっとだけでも自分を表現する場や環境があって、それでいい時間になったとかここに来てもいいんだなあと思えるような、ゆるやかな場になればと思って実施して来ました。それがひいては美術館過ごしたいい思い出だったりイメージに繋がると考えていたからです。館内のオープンスペースでただ遊んでいる場を提供しているようなわかりやすそうでわかりづらいコンセプトなので、なかなか各所に理解を得辛い部分ではあったのですが、本格的で濃密な体験ができるワークショップとは根本的に違う設計で考えていました。もちろんこれは私だけの構想ではなく、これまでの同僚との意見交換や建築の構造によるところも大きいです。また、主な会場としていたのは館内の「交流スペース」と呼ばれる外からも見えるオープンなスペースで、他のイベントで使用するほか、何もないときは通路でもあるので、設備を汚損しないよう使用できる素材や画材などにはある程度制限がありました。例えば、絵具や粘土は水道が遠かったため使うのが難しく、「乾き物」と個人的に呼んでいたものを使っていました。
アートとか美術館と聞いて自主的に来館する人向けというよりは、なんとなく楽しそうな場が見えるからふらっと行ってみようかなという塩梅を演出するのに様々な引き算をしたりしつつ、でも見本があってそれをただ手順通りに作れば完成みたいなインスタントに完成するものはできるだけ入れないようにしていました。開館から5年目までは本格的でとがったプログラムも、あーつひろばのような広く、浅く・・・でもちょっとだけ深さ(あるいは闇や毒?)が垣間見えるようなものも必要だと考えていました。私自身が引っ込み思案なので、コミュニケーション能力を要求されるような場や表現が爆発しまくっているような場は、あらかじめ心づもりしてオープンマインドなキャラクターのスイッチを入れないと参加できないタイプ。適度にフラットで放置してくれる方が居心地が良い時もあるので、そうした企画者個人の性格や好みも大いに反映されていたのは否定しません・・・。
ちなみに、件の男の子は2018年2月では小学校3年生になっていて、自分の意思で来てくれたようです。鑑賞ツアーでは以前のようにたくさんお話しはしませんでしたが、最後まで参加して他の子たちの発言に耳を傾け、そしてツアー後は工作のコーナーで色々自分で素材を見つけて想いを詰め込んでいる箱ができていました。そのことに私は内心とっても感激していたのですが、できるだけいつものように、つまり他の人たちと同じように接することにしました。
ああ、でもやっぱりちゃんと、あなたのおかげもあって「あーつひろば」は続けられていたのよ、ありがとうって伝えたかったなあ。
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